大雪山で起きている登山道の問題

~崩れていく道~


大雪山の「登山道荒廃問題」は深刻な状況です。
300kmあると言われる登山道では、いたるところで道が崩れ歩きにくくなり、土が流され、植物が減っています。

          

      

  

 

      

 

 

登山者は歩きにくくなった道を避け、植物の上を

歩くようになり、新たな侵食が始まります。
高山帯、樹林帯に関わらず、大雪山のほとんどの場所で

これらの侵食が起きています。

 

侵食原因は「豪雨などの気候が激しくなってきたから」

という声もありますが、それだけではありません。
地質を見ると、粘り強い表土の下には流水に弱い礫の層があります。崩れの激しい場所を観察すると、礫層を守ってきた表土が全くなくなっています。
ここ数十年の利用で表土が無くなった道が多くなりました。
礫が見え始めた場所は今までよりも侵食が加速します。

 

侵食は場所や進行状況によって様々な形で進んでいます。



登山道侵食の進み方


  

    

    

    

    

    


  複線化・・・歩きにくい場所を避けて新たな道が出来てしまう状態。

     


  泥濘化・・・表土が崩れて溜まり、ぬかるむ現象。

                                            実は表土を削っているのは私たち登山者です。

        


  ガリー侵食・・・流水が表土や礫層を削ってU字やV字状に削れてしまう現象。

     


  流水侵食・・・登山道が山側と谷側の植生を分断し、山側からの水を集めて水路となってしまいます。

            普段は全く水は流れていませんが、大雨の時にはこうなっています。

            これがガリー侵食につながっていきます。

     

       


  凍結融解現象・・・気温が下がると起きる「霜柱」です。これはかなり厄介な現象です。

               水分を含んだ土壌が霜柱に持ち上げられて細かく崩れていく現象です。

               登山道脇の法面(斜面)にはよくこの現象が起き登山道が削られています。

     


  放置・・・手入れをしていないこと。実はこれこそが荒廃の最大の原因です。

         白雲岳山頂直下では2006年からの約10年でこれだけの変化がありました。

         このような場所は大雪山にはたくさんあります。

     

     

     

     

 

   放置される木道・・・崩れても放置され、登山者が転んでケガをしてしまうほど。

                危険を感じ、木道を降りて歩く人も多くいます。

       


このような侵食に対応すべく、整備が行なわれることもありますが、

侵食原因を理解せず、ただ歩きやすさだけを求めた施工も多く、

施工後数年もせずに崩れてしまう場所も見られます。

                    


  施工の技術・経験不足・・・侵食原因を見誤ると、施工物が更なる侵食原因になることもあります。

     

 

 

 

流水がある登山道に段差を作ると、

落下水による洗掘現象が起き段差の下側が削れてしまいます。


  

 

 

 

 

砂質土壌に硬い板を置くと、

流水は板を避けて柔らかい法面を削ります。


 

 

 

削られた土壌は植物帯を埋めてしまいました。
施工することは自然を変えることです。
簡単に考えて施工すると、

とりかえしのつかないことが起きてしまいます。



  人工的な施工物・・・大雪山という自然の最奥では自然景観に配慮した施工も重要です。

              一度景観が崩れてしまうと、そこは自然ではなく、人工の道になってしまいます。
              残念ながら「土があり、植物があり、気候があり、生態系があり、風景になっている」

              ということを意識した管理は行なわれていません。

                   

大雪山の現状の管理では「侵食や崩壊のスピード」に「整備」が全く追い付かず、
やってもやっても崩れる場所が増えていく、という悪循環が起きてしまっています。

 

ですが、大雪山・山守隊は希望を持っています。
侵食原因をしっかり観察し、自然を見続けていると、
侵食の片隅で復元が起きていることに気が付きます。
通常は侵食作用が大きくて、小さな復元はつぶされてしまいますが、
何かのきっかけがあると、自然は復元していくことがはっきりと理解できます。